にも広がり、いままで子供に飲ませていたブランドでも青島工場製造品は危険が
あるとのこと。
中国国産品はどれもヤバイかも知れないということになり、妻は輸入品の粉ミル
クを買ってきた。
輸入品と言えども、原料は中国だったりするかも知れないわけで、一概に安全と
は言えないのだが・・・。
大連市政府も「事は深刻」ということで、指定病院での子供の検診を実施。妻が
息子の検診に行くから一緒に来るように頼まれた。最初は開発区医院と言ってい
たのだが、一緒に行く妻の友達夫婦のおばあちゃんの希望で市内の児童医院に行
くことになった。
大連市で一番良いと評価されている子供病院である。
普段は高額の診察料がかかると噂の児童医院だが、メラミン混入粉ミルク関係の
身体検査については完全無料とのこと。
大連で一番有名な子供病院、しかも診察が無料、となれば混雑は必死。
朝7時におばあちゃん・おじいちゃんとその孫息子、私たち3人の合計6人がタ
クシーに乗り込み、児童医院に向けて出発。8時頃に到着した時には、病院一階
の受付は既にあり得ない程多くの人であふれかえっていた。
通常一人の子供につき大人は最低二人付き添う。一般的には子供の両親だが、共
働きの家庭では、おじいちゃん・おばあちゃんだったりする。
お父さんが仕事で病院に来られない場合は、お母さんとその親戚の誰か(お姉さ
んや妹)が付き添う。その付き添いに更なる付き添いがいたりして(付き添い人
の子供など、もちろん粉ミルクを飲む年齢ではないが)、結果、病院のロビーは
人であふれかえることになるのである。
私と妻の友人のおばあちゃんはそれぞれ子供を抱きかかえて、おじいちゃんと妻
は受付へ手続きへ行った。
意外と早く戻ってきた。
機転を利かせた("割り込み"とも言う)のだろうか?
今度は2階内科の受付窓口に移動。
順番は132番。あと100人ぐらいいる。
しばらく時間がかかりそうなので、一階のロビーへ戻り、椅子に座って待つこと
にする。
待っている間にも続々と人がやってくる。皆、粉ミルク関係なんだろう。
通常の診察で来た人には迷惑な話だ。
ロビーは薄暗い。
時間つぶしに持ってきた小説を読めない。
妻と子供は外に行った。確かにこんな薄暗くて人の多い場所では子供がむずがる
だろう。
しばらくすると、妻が戻ってきて、そろそろ順番だから2階へ行くと言う。
内科の受付もたくさんの人で混み合っている。
職員の人がマイクを使って番号を読み上げるのだが、音が小さすぎて聞こえない。
拡声器まで持ち出してきたが、今度はハウリング(スピーカーからの音をマイク
が拾ってしまう)状態でピーピー鳴っていて何を言ってるのかわからない。
結局、生で大声を出すハメになる。アレじゃすぐ声枯れるぞ・・・。
受付の目の前に妻は陣取り、132番を呼ばれたとたん手を挙げ大声で叫ぶ。
内科の診察室はざっと見たところ1番から10番まであり、私たちが行くのは7
番である。
半分の診察室が稼働しているとして、一人3分の診察だとすると・・・一時間に
100人ぐらいこなせる計算。
診察室に入るとすでに6〜7人はつめかけている。
医師の隣にめざとくスペースを見つけた妻はすぐにそこへ行き、前の患者のカル
テの記入が終わりそうな頃合いを見計らって医師に話しかける。
なにやら用紙を渡されて、そこの検尿カップと試験管を持って行って検尿するよ
うに、と言われた。診察時間は1分と経っていない。
あれだけ順番待ちしたのはいったい何だったんだ?
息子はさっきオシッコさせたばかりなので、尿が出ない。
だが、おじいちゃんによるとまだ何か診察があるらしく、今度は四階へ向かう。
四階は階段のところから、ずらっと列ができていた。ざっと見たところ150人ぐ
らい並んでいる感じ。またしばらく待つことになりそうだ。
おじいちゃん・おばあちゃんと妻は子供を連れて外へ行った。私が列に並ぶ係で
ある。
病院のスタッフと込み入った会話なぞできない私には列へ並ぶぐらいしか役に立
てない。病院へ行く場合ツーマンセル(二人の組み合わせ)以上である必要なの
はこのためである。もし母親一人で病院へ来ようものならトイレに行くことすら
ままならない。(ダジャレじゃないです)
30分待ったが列が動く様子がない。
いや、動くことは動くのだが、係員がやってきて列を壁に沿って並ぶように移動
させた時ぐらいだ。先頭の人の位置は変わっていない。
おまけに四階はエアコンが効いていない。構造上、窓も開かないので半端でなく
蒸し暑い。暑がりの私は当然として、周りの人たちも大汗をかいている。恰幅の
いい男性はTシャツの後ろがびっしょり濡れているし、若いお母さんたちも額や
鼻から汗を吹き出している。タオル生地の私のハンカチも既にじっとりと湿って
いる。
時刻は10時半を過ぎた。
列はいっこうに前へ進まない。
こりゃダメだと思った私は、携帯で妻を呼ぶ。
しかし、脇の下に抱えた妻のバッグからブルブルと振動が伝わる。
携帯持って行ってないし・・・。
どうやって連絡取るんだよ。
しばらくすると妻が飲み物を持ってやってきた。
「列がちっとも進まないから、ここは諦めて開発区病院へ行こう。」
だが、おばあちゃんは開発区病院は良くないと言う。
「この調子だと5〜6時間待っても終わるかどうかわからないぞ。俺は今日休み
じゃないんだ。午前中に終わらないのなら、先へ帰る。」
あくまでも検査なのだ。子供の体の調子が悪いわけではない。
日を改めて開発区病院で検査すればいい。開発区病院は無料ではないが、そのほ
うがやってくる人も少なくて検査も早く済むだろう。
私の月給は当然妻も知っている。一日あたりいくら稼ぐことを考えれば、仕事が
できないことがどれだけの損失になるか考えてみて欲しい。
こういう思いがあったのだが、さすがに周囲の目もあるので言えない。
見かねたおじいさんが、今度は私が列に並ぶから貴方は少し下で休んでくるとい
い、と言ってくれた。汗だくでイライラしていた私は素直にその言葉に従った。
四階からの列は階段を伝わって二階の内科フロアまでつながっていた。500〜600
人はいる。正面入り口はガードマン二人によって既に閉鎖されていた。これ以上
は診察できないということなんだろう。
外で出ても涼しくない。今日は風が無い。
妻が買ってきたスポーツドリンクを一気に飲み干す。
それでも汗がひかないので、アイスを買ってきた。
新聞紙を敷いて地面に座る。子供たちはその上で遊んでいる。
病院の外には同じように座り込んでいる人たちがたくさんいた。
大連随一の子供病院ですら、患者が殺到するとこのような惨状だ。
今回のメラミン混入・粉ミルク事件の重大さを身をもって実感した。
12時頃、おじいさんからおばあさんへ電話で連絡が入った。あと20人ぐらいで
順番だそうである。前に100人以上並んでいたはずなのに、いったいどうしたの
か。
とにかく四階へ急ぐ。
私は階段のところで荷物の番をする係である。
階段で待つこと30分。
子供たちが戻ってきた。
二階の窓口で検査結果の紙をもらう。おじいさんがそれを持って医師に訊きに行
った。
健康で全く問題無いとのこと。
良かった。
帰りのタクシーでは皆疲れ切って熟睡。
運転手さんはおじいさんの親戚らしく、安心して寝る。
気がついたら金州のマンションに着いていた。
いや、ホントに疲れた・・・。
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